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  • 執筆者の写真矢野修三

「ことばの交差点 」11

更新日:2023年12月24日

                    日加トゥデイ12月号 掲載

☆ 「めんそーれ沖縄」編

 

 こんな夢を見た。

 我が輩はしゃれたかりゆしを着て、とてもうれしい気分で、沖縄・那覇の国際 

 通りを歩いている。でもなぜだかよく分らない。秋たけなわの10月、夕日が

 美しいたそがれ時である。スターバックスのマークが目に入り、びっくり。

 思わず店に飛び込みコーヒーを飲んでいると、前の席で子どもたちが楽しそうに

 しゃべっている。中学生ぐらいの男の子と女の子、そしてまだ幼いお茶目な

 女の子の兄弟姉妹らしき3人。今日、ママが結婚した新しいパパをナンて

 呼ぼうか・・・、そんな相談をしているようで思わず耳を傾けた。

 しばらくしてママと新しいパパが現れた。そのパパの顔を見たとき、目がさめた。

                   令和5年10月 夢一夜 (漱石「夢十夜」に因んで)

 


 私事で恐縮ですが、この10月久しぶりに日本を訪れ、先ずは沖縄に、さらに足を伸ばして台湾、そして東京・川崎と駆け巡った。実は、息子が沖縄の女性と結婚式を。那覇で

ささやかながら、沖縄伝統のシャツ、かりゆしを着て、心に残る結婚披露宴を。そして

突如として素敵なお孫ちゃんが3人。沖縄の守り神シーサーのおかげで、初めての

じいちゃん・ばあちゃん役も無事こなすことができ、とてもうれシーサー。


 自然豊かな、独特な歴史を持つ沖縄にはぜひ一度訪れてみたいと思っていたが、

バンクーバーに移住してからは、かなり遠い存在に。でもこのような形で夢が実現する

とは、この上ない喜びで、先ずは息子に感謝。また、はるか昔の教師養成講座の卒業生と

ハグもでき、すごくたのシーサー。誠に有意義な大きな節目となる沖縄の旅であった。


 また、日本語教師として沖縄語(うちなーぐち)はとても興味深い。数多くあるが

先ずは空港で目につく「めんそーれ沖縄」は「ようこそ沖縄」であり、「こんにちは」は

「ハイサイ」と「ハイタイ」で、男性と女性で異なり、確かに文化の違いを感じる。


 さらに、言い方は標準語と同じだが、意味がおもしろく異なる、例えば

「ランチに行きましょうね」である。この表現を沖縄以外の会社などで、

突然聞いた人は「えー、なぜ、急に・・・」と、間違いなく戸惑ってしまうであろう。


 日本語教師としても、この「~しましょう」は「Let’s」の意味、相手を誘う表現として教えている。「あ、もうお昼、ランチに行きましょう」や

「疲れました、ちょっと休みましょう」などである。


 でも沖縄では文の最後に「ね」を付けて「~しましょうね」はナント、誘いではなく、

単に自分の行動を相手に伝えるときに使う表現とのこと。えー、びっくり。


 すると、「ランチに行きましょうね」を聞いて誘われたと思い、一緒について行ったら、沖縄の人(うちなーんちゅ)は逆にびっくりしちゃうのであろう。実際、

「お先に帰りましょうね」と言って、一人で帰るのがごく自然で、標準語の

「お先に帰ります」と同じ意味として使っているとのこと。うーん、なるほど。


 こんな言い方は人との繋がりを大切にし、相手に対して常に温かな言葉で接したいと

する沖縄特有の文化と言われており、慣れれば、確かに温かみを感じる表現である。


 このように、沖縄言葉は古き文化とも絡んで奥が深い言語であり、ぜひもっと学んで

みたい。そしてお孫ちゃんたちと、ぜひまた国際通りを歩いてみたい。

では、今回のエッセイはこれにて終わりにします、ではなく、終わりにしましょうね。




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