日加トゥデイ 2025年1月号 掲載
☆ 「おめでとうございました」の文化的背景
明けましておめでとうございます。今年は巳(み)年、「巳」を「実」にかけて、いろいろ楽しい願いが、巳を結びますように・・・。本年もよろしくお願い申し上げます。
先日、日本語上級者から、「先生、新年の挨拶が遅くなってすみません。明けましておめでとうございました」。こんなメールが届き、思わず読み返した。過去形の「おめでとうございました」であり、びっくり仰天。確かに、正月も半ば、時制にうるさい英語を母語と
する彼女が過去形を使った気持ちは分からないでもない。彼女も冗談半分、でも半分は本気だったようで・・・、思わず「明けましておめでとうございました」には笑ってしまった。
この「ございます」は表現を丁寧にする魔法の言葉として教えている。例えば、お礼や
お祝いなどの「ありがとう」や「おめでとう」、さらに、挨拶の「おはよう」などに付けて丁寧な表現に。これらは今の自分の気持ちを述べる言葉であり、基本的に過去形はふさわしくない。もし「おめでとうございました」と言ったら、今は
「おめでとうと思っていません」という意味にとられてしまう恐れも・・・、ましてや、
お昼近くの朝の挨拶、「おはようございました」は、それこそ落語の世界である。
しかし、明らかに過去の出来事について、お祝いやお礼を述べる場合、
「先日のお祝い会、素晴らしかったですね。おめでとうございました」や
「この間はご馳走さま、ありがとうございました」のように、「先日」や「この間」など
過去のイメージを持つ言葉と一緒であれば、「ございました」を使う人も多いのは・・・。個人差もあろうが、日本人は何となく、自然に使い分けている。
こんな経験も。知り合いの結婚式、本人への挨拶は当然「おめでとうございます」だが、式が終わり、ご両親などへの挨拶として、「本日は誠におめでとうございました」と述べた記憶がある。これは「本日の結婚式が素晴らしかった」ことをすごく強めたい意識で、
過去形を使ったような・・・「過去形」にはそのような効果があるような・・・。うーん、個人的な感覚なので、説明が分かりにくく、すみません。
特に、お礼の「ありがとうございます」は少々面倒なり。例えば、一斉メールなどで、
ある情報を受け取った場合、返信メールに「ご連絡ありがとうございます」か、「ありがとうございました」か、どちらを使おうか、と迷いながら・・・、それなりに何気に使い分けているのでは。それはタイミングや人間関係の強弱や個人的な感情などで微妙に変わって
くる。その通り。
確かに、道に迷って、通りすがりの人に親切に教えてもらった場合は、「大変ありがとうございました」と言いたくなる人も多いのでは・・・。それは、もう二度と会わない他人なので、しっかりと、けじめをつけたお礼を述べたい気持ちから、やはり、過去形「ました」にはそんな魔法の力が・・・。
もちろん、最終的には、各々個人の判断で全く問題ないが、何か文化的な奥深さを感じる。英語の「Thank you」に、past tense の feeling など、
これっぼっちもないであろう。今までこんなこと考えたこともなかったが、生徒のメールからいろいろ考えさせられ、大いに勉強になり、楽しい年明けに・・・。
とっくに明けまして、おめでとうございました!
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