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≪ことばの交差点》25

執筆者の写真: 矢野修三矢野修三

                      日加トゥデイ 2025年2月号 掲載


☆ 「足」と「脚」の奥深さを楽しむ 

 

 いきなりですが、「雨あしが強くなる」の「雨あし」を漢字で書くと、

「雨足」か「雨脚」か・・・。いろいろな人に聞いたところ、ほとんど「雨足」。

理由は、「脚」は書くのが難しいから。確かに、


 常用漢字になったのも比較的新しく、「足」に比べて馴染みの薄い漢字である。

でも語源を調べてみると、中国から「雨脚」として、ナント平安時代ごろに入ってきた

とのこと。でも、当時は「雨の脚」と書いたようで、源氏物語にも出てくる。なるほど。


 そして、江戸から明治・昭和にかけて、いろいろ変化し、表記も「雨の脚」から

「雨脚」、読みは「あめあし」。さらに、「雨足」も登場し、読み方も「あまあし」に・・・。近代の文学作品などには「雨脚」のほうが多い感じだが、「雨足」もちゃんと

使われている。


 このように歴史のある言葉であり、どちらが正しいか、など決める必要はなく、個人の

勝手で問題なし。でも、最近は何となく「雨脚」のほうが詩的で、文学的センスありと

思われるかも。


 実は、40歳過ぎに日本語教師になった昭和62年(1987年)ごろはこの「脚」はほとんど

教えておらず、移住して、バンクーバーで「足を組む」を教えたとき、すごく困った思い出がある。


 この「足」と「脚」の違いだが一応辞書には、「足」は足首から先の部分で、「脚」は

太ももの付け根から下の部分とされている。でも、訓読みはどちらも「あし」であり、違いなどもかなり曖昧で、日本語では、一般的に、人体には「脚」は使わず、ほとんど「足」を使っている。


 しかし、英語ではちゃんと「foot」と「leg」をはっきり区別。そこで英語では

「足を組む」は「cross my legs」であり、「feet」などは全く考えらず、生徒から

「脚を組む」のほうが分かりやすいですと、日本語の曖昧さを指摘されたようで、戸惑ってしまった。うーん、その通り。


 確かに、日本語は「足が大きい」や「足が太い」「足が長い」などで、足のどこの部分なのか、何となく分かってしまう。実用的だが、生徒にとっては誠にややこしい。特に、海外で教える日本語教師は要注意である。


 先日、ワイングラスの数え方「1脚・2脚」から、こんな質問を受けて、びっくり。

なぜ、「美脚」と「脚本」と同じ「脚」の漢字を使いますか・・・。こんなこと日本人は考えたこともなく、困ったが、美脚に惑わされず、じっくり考えて・・・、「脚」は人間の体を支える大事な役目をしており、「脚本」も映画や舞台などの土台となるもので、どちらも物事を支える大事な役割を表わす漢字だから、と何とか説明づけた。 


 ところで、この「美脚」だが、最近はSNSなどでよく目につくようになり、生徒も質問したくなったとのこと。でも、なぜ「美足」じゃなくて「美脚」なのか・・・。理由は分らないが、確かに、音読みの場合は、「美足」(びそく)では発音も、見た目にもあまりピンと

来ず、「美脚」(びきゃく)のほうが、何となく上品で、おしゃれな感じが。

「感じ」も「漢字」も時代とともに、変わりゆくものなり。


 ミニスカートが流行し始めた昭和42年(1967年)、ツイッギーちゃんの「足」がきれいだった。でも、近ごろでは「輝く美脚」などのほうがいい感じかも。


 今年2025年は昭和100年。「昭和」はますます遠くなりにけりだが、まだまだ「足腰」を鍛えて頑張らねば。でも、最近の漢字は「脚腰」のほうが感じいいかも。


 

 
 
 

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