外から見る日本語 253
- 矢野修三
- 2023年8月21日
- 読了時間: 2分
バンクーバー新報 8月号に掲載

☆ 「凸凹」と「凹凸」の読み方は ?
さわやかな青空が広がって、これぞバンクーバーの夏。いろいろ楽しまねば。先ずは、コロナによる運動不足を解消すべく、ハイキングや歩こう会などに張り切って参加している。
先日も同世代の友人とバスに乗らず歩くことに・・・、ぺちゃくちゃしゃべりながら
歩き始めた。途中道路工事の場所があり、でこぼこしている。友が思わず躓いて転びそうに
なった。何とか持ちこたえて、事なきを得たが、我らシニアにはよくあることで、
足元に注意。特にでこぼこ道では「上を向いて歩こう」ではなく、「下を向いて歩こう」が大事である。
コーヒーショップに入り、一休み。「凸」「凹」の漢字が話題になり、日本語教師としての経験談をしゃべり始めた。大部分の生徒はこの「凸・凹」を見たとき、記号だと思ってしまう。でも漢字だと教えるとびっくり。確かに、形からして漢字らしくなく、日本人にもあまり馴染みがないが、ちゃんとした漢字で、しかも常用漢字である。
次に、漢字だと分かると、当然「読み方は? 画数は? 書き順は?」の先生いじめの質問が待っている。うーん、「凸」「凹」は教師泣かせの漢字なり。読み方だが、
「凸」は「トツ」が音読みで「でこ」が訓読み。
「凹」は「オウ」が音読み、「ぼこ」が訓読み。さらに、画数などは考えたこともなく、「もちろん一画だよ」の冗談も言いたいところだが、両方とも五画とのこと。
興味のある方はぜひ書き順もお調べくだされ。驚くこと間違いなし。
そして「凸凹」と「凹凸」の読み方だが、「凸凹」が訓読みの「でこぼこ」で、
「凹凸」は音読みの「おうとつ」が一応ルールである。でもなぜか、訓読みの「でこ」と「ぼこ」は常用漢字の読みには入っておらず、公文書や新聞などでは「でこぼこ」と
ひらがなで書くことになっている。もちろん、個人のメールなどでは「凸凹」と漢字で書いても問題なし。うーん、ややこしいが、ひらがなの「でこぼこ」のほうに親しみを感じる
人が多く、話し言葉として使われている。
一方、「凹凸」(おうとつ)は音読みなので当然漢字表記だが、やはり硬い感じがするので文書などの書き言葉として使う人が多い。すなわち、「でこぼこな道」と「凹凸のある道」の違いである。なるほど。
友人が凹凸(おうとつ)のある道でつまずいたおかげで、コーヒーを飲みながら、長々と
話し込んでしまった。本来の目的である「歩く」ことも忘れて・・・、
まさに本末転倒である。
でも転倒しなかったからラッキーと、冷たくなったコーヒーで乾杯、お開きとした。
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