2021年4月 バンクーバー新報掲載
☆ 「すごい」はやばい ?
先日ワクチンを接種し、副作用も無く先ずは一安心。しかし
コロナ感染は依然として緊迫しており、外出も控えざるを得ない。オンラインによる授業やミーティングに楽しみを見いだして、
先日も日本で日本語教師をしている卒業生と日本語教育などに
ついて話した。ワクチン接種を伝えたら、
「すごい痛かったですか ?」である。思わずびっくり。
笑いながら彼女いわく、日本語教師になって、この「すごい」の使い方がすごく気に
なっているとのこと。若者だけではなく、世代に関係なく「すごいおいしい」や
「すごいきれい」などのおかしな表現がかなり広まっており、日本語上級者から
「間違いですよね」と質問されて困ってしまう・・・。なるほど。
確かにこんな言い方は文法的には間違いであり、日本語教師としては「すごい暑さ」
と「すごく暑い」の違いをしっかり教えて、「すごい暑い」はダメ。だから
「すごくおいしい」や「すごくきれい」が正しいですよ、である。
しかしこの話題はかなり昔にも聞いたことがあり、SNSなどの普及で、かなり拍車が
かかっているようである。日本語教師としては困りものだが、でもなぜこんな表現が
広まったのであろう。
教師養成講座の卒業生や最近の受講生に聞いてみると、使っていると答える生徒も
かなり多い。間違いだと分かっていても、「すごいおいしい」のほうが言いやすいからと
答える人も、また、先に「すごい」と強調して、自分の感情を強く表したいときなどは
「すごい困る」がぴったりするとのこと。えー、うーん。
確かに、言葉は時代とともに変わり、新たに生まれる。この「すごい」だが、かなり
昔は俗っぽい表現とされ、フォーマルな場面では使いにくかった。でも現在では使い方も
どんどん変化している。であれば、「すごいうれしい」や「すごい困る」などもいつの日か一般的になる・・・、いや、もうすでになっているのかも?
さて、「すごい」の漢字「凄い」だが、常用漢字としては音読みの「セイ」だけで
「凄惨」などであり、残念ながら、訓読みの凄い(すごい)や凄まじい(すさまじい)は
常用漢字に入っていない。それゆえ、公文書はひらがな書きだが、個人メールなどは
問題なし。
この漢字は部首「にすい」に「妻」である。なぜ「妻」が出てくるのか? 「にすい」は
氷を表わしており、妻が氷を持つ形相は、ぞっとするほど恐ろしい。
いえ、定かではござらぬ。
いつか「このお寿司、すごいおいしい、超やばいね」 こんな日本語を
日本語教師として、教えなければ・・・。彼女と笑いながら思わず頷いてしまった。
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